壮大な竜門石窟



牡丹が花盛りだった、5月の始めに訪れた洛陽。春は乾燥して雨は少ないというが、異常気象の影響なのであろうか、あいにくの天気になってしまった。
夜半から降りだした強い雨は朝になっても止まず、さらに強風を伴ってきた。当地では恵みの雨であろうが、我々旅人にとっては無常の雨である。
ホテルでの朝食後に、バスで龍門石窟へと向かう。まるで台風のような風雨は、止みそうもない。水捌けの悪い市内のそこここの道路は、冠水している。
やっとの思いで、石窟近くの伊河のほとりに辿り着いた。でも、風雨はますます激しくなり、雷まで伴ってきた。傘をさしていられないほどの強風だが、ここまで来て引き下がるわけにはいかない。
濡れネズミになり、寒さに震えながら、石窟に辿り着いたときにはほっとした。
龍門石窟は、黄河の支流の伊河の沿って約1キロに渡って広がる石窟で、莫高窟と雲崗と並ぶ、中国三大石窟の一つである。石窟は、1352ヵ所あり、仏像数は97000余体といわれている。2000年に、ユネスコの世界遺産に登録された。



石窟寺院の造営は北魏の494年に始まり、唐代までの約400年間に渡って続けられた。
代表的な窟は、〈龍門の顔〉といわれている「奉先寺」だ。
巨像のルシャナ仏は17mあり、唐代随一の巨像で、初唐の代表的傑作でもある。北魏時代の仏像はヘレニズムの影響が見られるが、この像は中国的な造形である。
則天武后をモデルにしたという尊顔は、柔和で慈悲に満ちている。台座がだいぶ破損していて、定印と趺坐の姿が分からない。



北壁にある、力士像も素晴らしい。今にも激しい言葉が飛び出してきそうな、気迫に満ちた憤怒相をしている。
ヘレニズムとの関わりが、はっきりと表れている賓楊洞。万仏洞の壁には、数センチの小仏の群が15000体余りも刻まれている。
薬の調合法が記されているという薬方洞や、古い歴史を誇る古楊洞。
無数に彫られた石窟の仏像の数々を眺めていると、往時の仏教の歴史と深い信仰心から生まれた、仏教芸術の素晴らしさが窺い知れる。





                                  
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