ペルシアの顔・シーラーズ



テヘランの約600k南方にある、古都・シーラーズ。アケメネス朝は、この地方から興っている。
標高1600mの高地にあり、四季を通して気候は穏やかだ。そのためか、街には庭園が多い。バラの美しさは有名であり、古くから芸術や文化の中心地だった。
イラン国民が愛する四大詩人のうちの二人、ハーフェズとサアディーを輩出した地である。エスファハーンに負けないくらい美しいものにしようとした、ザンド朝の名君、キャリーム・ハーンによって建てられた寺院やバザールが、今日も旧市街の町並みを彩っている。
シーラーズの空港から、バスで30分ほどのところに、「エラム庭園」がある。
この宮殿は、18世紀末のガージャール朝時代に造られた庭園だ。「エラム」とは、ペルシア語で「楽園」の意で、シーラーズにある数々の庭園の中でも、最も華やかな庭園だという。
天に突き上げるかのような巨大な糸杉を見やりつつ、門から真っすぐに行くと、宮殿に出る。
この「エラム宮殿」は、19世紀に建てられた、ガージャール朝の代表傑作の宮殿といわれている。
定評通りの華麗な造りであり、建物の前にある池から吹き上がる噴水の水が清々しい。
宮殿壁面のタイルは、細部にわたって繊細な美しさを見せている。鮮やかなモザイク・タイルにより、王室の情景が描かれており、動物たちの姿も見られる。
華やかな絵柄には、赤やピンクのタイルがふんだんに使われている。本来この色は、イランには無かったそうだが、200年ほど前に入ってきた色だという。
庭園のほぼ中央にある、宮殿。この建物を、木々や花々が囲んでいる。伸び上がった緑の糸杉は、優美な宮殿とよく調和している。
そこここに花壇のある、緑の公園を歩いて行く。若者のグループや、家族連れで混み合っていた。
花壇には、ハナワギクや西洋マツムシソウに似た、彩色豊かな花々で溢れている。バラの木も多いが、咲いているのは白とピンク色のものが僅かだった。5、6月に咲き揃うという時節は、それは見事だろう。
近くにいた少年が、写真を撮って欲しいという。わたしがカメラを向けると、付近にいた人たちも集まってきた。少年の家族のようだ。
子どもたちや、8人の家族がポーズをとった写真を、数枚撮り終えた。写真を送る約束をして、持っていたわたしのメモ帳に住所を書いてもらう。ペルシア語で分からないが、このままコピーをして封筒に貼れば、届くはずだ。
別れ際、母親とおぼしき年長の女性が、豆のような菓子がいっぱい入った袋を、わたしの体に押し付けてきた。一瞬躊躇したが、ありがたく戴いた。
子どもも大人も、皆笑顔が素晴らしかった。娘と思われる2人の女性は、住所を書いてくれた父親に、似た顔だった。



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