海から最も遠い都市・ウルムチ



新疆ウイグル自治区の区都・ウルムチは、中国西部の最大都市である。天山山脈北麓にある、ジュンガル盆地の東南縁にある。都市は四方のどの海からも2300キロ以上も離れているので、「海から最も遠い都市」といわれている。
19世紀に入って、ロシア帝国が東進してくる。対ロシアの軍事拠点として、ウルムチが重要視されて町も発達していった。
現在のウルムチは、人口の約80パーセントが、漢民族という植民都市だ。その他、ウイグル族やカザフ族、モンゴル族、回族など、42の民族が住んでいる。ウルムチはまさに、民族の交差点ともいえよう。
この地の歴史は250年ほどしかないが、18世紀までは遊牧民の牧地だった。そのために漢民族が入植してくると、周辺の遊牧民との領土争いが絶えなかった。
現在の「ウルムチ」との称号は、1955年に改称されてからである、1763年にモンゴル族オイラート部が築城して、城壁が設けられてからは、「テキカ城」と呼ばれていた。
清末期から中華民国にかけて、国内の乱れや諸外国の侵入によって混乱を極め、町は停滞縮小してしまった。しかし中華人民共和国建国後は、中国西域地区の拠点として開発が進められたことによって、飛躍的に発展をした。



かつては、隊商交易の中心地だったウルムチ。現在は、政治・経済の要地となっていったのである。
ウルムチは北京よりも、2時間遅れの時差がある。しかし、北京標準時しか認めていないので、時差は存在しない。でもこちらでは、2時間ずらせた新疆時間が使われている。
街にはノッポビルが林立し、5年前に来たときとは違いすっかり様変わりしている。よく見かけたロバ車は、車に取って代えられていた。街ゆく人たちの中には、北京や上海で見る、いや日本のファッション雑誌から抜け出して来たような、若者たちをよく見かける。これも時代が変わり、「空のシルクロード」から逸早く伝わったのだろう。
「ウルムチ」とは、ウイグル語で「美しい牧場」の意である。そんな麗しい言葉とは裏腹に、過酷な自然環境の地だ。夏は強烈な日差しが照りつける反面冬にはダイヤモンド・ダストが舞うほど寒い。
古代よりオアシス都市として栄えた、新疆ウイグル自治区の区都ウルムチ。その「新疆」とは、英語でトルキスタンと呼ぶように、トルコ系のウイグル族が住む地である。
また、新疆との文字の意味も深い。「新」とはこの地の古称で、「疆」の字は、この地域の地勢と民族を表している。
北からアルタイ山脈、ジュンガル盆地、天山山脈、タリム盆地、崑崙山脈など、三つの山脈「一」の間に、二つの盆地「田」が挟まれている旁(つくり)である。

「疆」の偏は、狩猟騎馬民族の「弓」と、オアシスで農耕する人を表す、「土」を組み合わせている。





                                  
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