炎熱のトルファン盆地



トルファン盆地の中央部には、平均海抜が500mの小高い山々がある。東西100m、南北に10キロに達し、最も高い勝金口付近は851mある。この山が、明代の長編小説の『西遊記』に登場する、火焔山として有名になった山である。襞が入った赤い山肌は、夏には地表から立ち上る陽炎によって、燃えているように見える。そんなありさまから、火焔山との名が付いたそうだ。
火焔山と道路を隔てた南側には、「アスターナ古墳群」がある。「カラ・ホージャ古墳群」ともいわれている、高昌国の住民と、唐代西州住民の墓地群である。墓室からは、大量の絹製品や陶器、文書などが出土しており、壁画やミイラも残っている。
往時の麹氏高昌国においては、麹氏王家を中心とした仏教信仰が盛んであり、この国の漢人の多くも仏教を信仰していたようだ。
ここにあるすべての墓には、斜めの参道があり、地中に墓室がある。その最古のものは273年で、最も新しいものは778年に造られている。現在見学できるものが、三基ある。
その一つに入ってみると、狭いが壁画が鮮やかだった。
それよりも、前回来たときを思い出す。トルファンに着いたのが遅かったので、この古墳群に来たのが、午後9時過ぎだった。ガイドの女史とともに、懐中電灯を頼りに漆黒の古墳に入った。彼女は、やや興奮気味に言った。
「10年ガイドをやっていますが、夜中にここに入ったのは、初めてです」
そのときは、ベゼクリク千仏洞も夜訪れた。月明かりに照らされた、丸屋根がピンク色に染まっていて、実に幻想的な光景だったことを思い出す。
ゴビ灘の中に点在する、アスターナ古墳群。辺りには、日差しを遮るものは何もなく、肌を刺すような太陽が輝いている。
トルファンの南約40kに、湖がある。「アイディン湖」で、春には満々とした水位も、夏にはすっかりなくなってしまう。湖とはいえない湖だが、砂漠の中にある貴重な水源である。
夏の暑さで蒸発して干上がった湖底には、塩の結晶がいたる所に見られるが、春になると再び雪解け水が流れ込んでくる。アイディン湖とは、ウイグル語の「アイディンコル(月光湖)」に由来するそうだ。この湖は海抜マイナス154mで、イスラエルの死海に次いで世界第2位の低地にある湖である。
「蘇公塔」は、トルファンの南東6kにある。塔の横にはモスクがあり、トルファン郡王のスレイマンが、父オーミン・ホージャのために1779年に建造した尖塔である。高さ44mの円柱形の塔は、レンガ造りで模様が彫り込まれている。この塔は、代表的な新疆イスラム建築様式である。
市街の高昌公園の向かい側にあるのは、「トルファン博物館」だ。一階は、トルファンの歴史を紹介する「文物陳列」と、新疆で発掘された恐竜などの古生物を展示する、「巨犀化石陳列」になっている。
二階は、高昌国期のミイラを展示する「古屍陳列」だ。この館を見ると、トルファンの歴史が一目で分かる。





                                  
inserted by FC2 system