中国に住むウイグル人


ウイグル人の多くは、中央アジアのタリム盆地に居住する。伝統的には、オアシスに定住して農耕や商業に従事している。
現在、中国のウイグル人は、中国の少数民族として「維吾爾族(ウイグルゾク)」と呼ばれている。
カザフスタンやキルギス、ウズベキスタンなどにも、少数のウイグル人が住んでいる。そのほとんどの人は、十九世紀後半以降に中国支配を嫌って、移住した人々の子孫である。
ウイグル人には、二種のタイプがある。その一つは、古代のモンゴル高原で活動していた、テュルク系遊牧民のウイグル人だ。もう一つは、古代にタリム盆地に居住していた、インド・ヨーロッパ族の言語を話す諸民族を祖先とする、ウイグル人である。人種的には、モンゴロイドとコーカンドの混血といえる。しかし個人差が大きく、見た目には、漢族と区別がつき難い人もいる。
ウイグル人の祖先を含めて、東西トルキスタンのオアシス都市の住民たちは、固有の民族名称を持っていなかった。しかし、ロシア革命によって成立したソビエト政権は、民族別の自治を掲げて「民族的境界区分」が施された。
1934年の省府会議で、「維吾爾」との民族呼称としての漢字表記が、このとき正式に決まったのだ。「ウイグル」とは、「団結」、「連合」との意である。
中国で二番目の自治区として、「新疆ウイグル自治区」になったのは1955年だ。その後、漢族の移住者が増大するに従って、民族間の摩擦も広がっていった。主な要因は、経済格差の拡大やソ連崩壊と、中央アジアの連接する民族国家の独立などである。チベット自治区とともに、中国にとっては、もっとも大きな民族問題を抱えることとなった。
ウイグル人や少数民族に対して、中国政府はさまざまな弾圧を加えていることも確かである。
事実上の強制労働でもある、無償労働を強いている。また、25歳以下の女性を、大都市に強制移住させて働かせている。その数は、24万人以上ともいわれている。さらに2000年には、ウイグル語の使用を禁止するなどの、中国人による凄まじい弾圧に晒されている。
そのためにウイグル人は、国外で独立運動を続けているのだ。それは、中国政府の民族弾圧に対する、抵抗である。
ウイグル人のほぼ全員が、イスラム教のスンナ派を信仰している。さらに、トルコ系祖先が信じていた古代シャーマニズムに、儀式の名残がみられるようだ。
現在のウイグル人の民族舞踊に、「サマ踊り」がある。これはシャーマンの儀式の由来とされ、実際にウイグル南部には、呪術師バックシが存在するという。舞踊の「サマ・ウスーリ」は、シャーマニズム信仰からきた踊りといわれている。主に、カシュガルやヤルカンド方面に普及しており、ふつうは男だけが踊るそうだ。



ホーム

inserted by FC2 system