バザールの雑踏と熱気


「バザール見ずして、カシュガルは語れない」といわれるほど、カシュガルのイメージは、バザールといっても過言ではない。古来より、シルクロードの商業都市として栄えてきた、深い歴史を現在に伝えている。
車やバイク、自転車、ロバ車の行き交う、狭い道路の間隙を縫うようにして、多くの人々が通り抜けて行く。靴やサンダル、帽子、衣類、雑貨、果物、野菜……。それぞれの売り物を、山と積み上げた店や、壁いっぱいに吊した店が、通りの両側に軒を連ねている。ここに来れば、調度品を含めて何でも揃う。
果物ではスイカやハミウリ、イチジク、ザクロ、ブドウといった、西域の果物が溢れている。それに、リンゴなども山になっていた。
そんな店の前には、さらに屋台や露店が並んでいる。衣料品やスイカの切り売り、シシカバブなどの店が隣り合っている。中には、商品を道路に直置きにして、客待ちをしている。よそ見をして歩こうものなら、人や物にぶつかってしまうほどの混みようだ。祭りでもないのに、賑わい、活気、盛況……を通り越した、ひしめき合う雑踏の渦である。
買い物をしている女性で、チャドルを纏った黒ずくめの人も見かけるが、大半はワンピース姿だ。行き交う女性たちは、赤やピンク、緑、青色などの明るい服装が多い。娘たちは、花柄やウイグルの民族模様でもある、矢絣の服装が多い。女性のほとんどが、水玉や花柄の透けたスカーフを被っている。
そんな女性たちに比べて、シャツにくすんだ色のズボンと、ウイグル帽や鳥打帽姿の男たちとが、対照的である。
バザールで目に付くのが、羊肉を吊るして切り売りをしている屋台店だ。驚いたことに、たくさんの蝿が肉に群がっているのだ。店主は見ていても、そ知らぬ顔をしている。わたしは唖然としつつ、近寄って肉を見た。
それは蝿ではなくて、蜂の群だった。ガイド氏に訊くと、蜜蜂が肉汁や肉を食べているのだそうだ。少々の肉は食べられても、蝿避けになるという。蜂に恐れた蝿が、近寄れないという。注意して見ていると、どの店の肉も蜂だらけだった。
そんな、蜂による蝿対策に関心していると、ガイド氏はさらに言った。
「蜂が多いということは、果実が多い証拠です」
バザールの溢れるような、さまざまな果実を見ても頷ける。イチジクは、年に3回実るそうだ。蜜蜂たちは花に集い、蜂蜜を作り果物を結実させるという、偉大な働き手なのである。



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