新疆一の手工業を誇る職人街


エイティガール寺院付近から、職人街の家並みが広がっている。その地域に入ると、道路の両側には、工房を兼ねた小さな店が軒を連ねていた。木工細工や金属製品、パン、衣類、靴、楽器、帽子屋……が、入り混じって店を構えている。そこには小学生ほどの少年も、職人たちと一緒に働いていた。ここの職人たちの誰もが、「ここの品物は新疆一だ!」と自負しているそうだ。
開いた扉の中を覗くと、そこは縫製工房だった。狭い部屋には、身動きのできないほど、大勢の針子さんたちがいた。娘たちはミシンを前にして、女性服の仕立て中である。高い天井に張られたロープには、カラフルで華やかなワンピースが、ハンガーに吊るされていた。
店先に、たくさんの民族楽器を並べた楽器店。出てきた若い店主は、売り物のハンド・ドラムを手にして、リズミカルな音を奏でてくれた。
辺りに漂う香ばしい匂いは、ナンを焼いているのだ。店先には、丸いパンも並んでいる。
狭い建屋から、道路にまで店を広げた鍛冶屋。小さな炉で鉄板を熱し、ハンマーで叩いて鍋を作っているのは少年だ。
少女たちも、仕事をしている。数人が縁台に座って、ボタン付けをしていた。家の前が仕事場で、着物が山と積まれている。
わたしの歩く足元で、木屑を飛ばして木工旋盤を回している職人。全身に切り屑を付けているが、無心に手を動かしていた。その側では、電柱のように太い材木を、手鋸で切っている。息の合ったその親子の仕事を、足を止めてしばし眺めていた。
活気のある職人街。道路に沿った家々や、歩道が彼らの工房であり、工場なのだ。見たところ、ミシンや木工旋盤以外には、めぼしい機械は見渡らない。まったくの手作りで、ウイグル人たちの生活の必需品すべてが、ここから生まれてくるのである。
気になったことは、平日の町に子どもたちが多いことだ。ガイド氏に訊くと、彼は眉をひそめつつ言った。
「学校を出ても、働くところがありません。親は早くから手に職を付けさせて、子どもたちを一人前の職人にします。その方が、この辺では生活が保障されています」
そのガイド氏。本人からではないが、彼は医者だと聞いている。角膜の権威で、日本に2年間留学したことがあるそうだ。しかしカシュガルでは、眼科医だけでは生活が成り立たず、達者な日本語を活かしてガイドのアルバイトをしているという。



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