砂漠へ向かう最後の町


ヤルカンドは、比較的木々の緑が多い。沿道には、ポプラ並木が延々と続いている。
畑にはトウモロコシが植えてあり、民家が点在している。そんな車窓からの風景を眺めていると、ほどなくしてカドラという小さな町に着いた。ここで昼食である。
鄙びた町にそぐわない、白とブルーのタイル張りのけばけばしいホテル。町一番に立派な、ホテルのレストランに入る。
お茶が出るまでに20分。注文したビールが運ばれてくるまでに、さらに10分。でも「これがタクラマカン・ペース」と、腹をすえるしかないだろう。これからの長い道中を考えると、むしろドライバーの方が、気が揉めていたに違いない。
結局、昼食に1時間半も、貴重な時間を費やしてしまった。
食事が終わるや否や、出発した。バスは小刻みに揺れながら、スピードを上げていく。
町を離れるほどに、しだいに民家が途絶えていき、いつしか人の姿は見かけなくなっていった。そこはもう、地平線までも見渡せる砂漠地帯である。右手遠方に見える、ぼんやりと霞んだなだらかな山のシルエットは、崑崙山脈の前衛峰であろう。
果てしなく続く、黄白色のタクラマカン砂漠。小さな起伏が、広大な大地に変化を与えている。ちなみに「タクラマカン」とは、「入ると出られない地」との意で、その面積は、日本の国土面積にほぼ近い広さだ。
眼前の広大無辺の砂漠を眺めつつ、かつて読んだことのある、タクラマカン砂漠の本の内容を思い浮かべていた。



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