ウテン国の砦・マリカワト古城



ホータン市の南約25k、白玉河の西岸にマリカワト古城の遺跡がある。
南北1.5k、東西800mの日乾しレンガ造りの遺跡は、現在、痕跡があるのみだ。明代の陶器工場跡もあり、陶器片が散らばっているようだ。遺跡は二十世紀の始めに、イギリスの探検家オーレル・スタインによって発掘されている。
マリカワト古城へ行くために、われわれはホテルに着くやいなや、慌しく夕食を済ませてから車に乗り込んだ。時計は、午後9時半を回っていた。暗くて懐中電灯だけが頼りだが、明朝はウルムチに戻る子定なので、今しか時間がない。
悪路に揺られること40分、車は砂漠の一隅に停まった。この先は、車では行けないので、ロバ車に乗り換える。昼間の熱気を帯びた砂漠の空気を引きずって、辺りはむっとしていた。
お盆のような月を眺めながら、ロバ車に揺られる。何とも、ロマンチックだ。
しかし実際には、砂と石の間を進んでいるので激しく揺れ、乗り心地は悪い。数人の子どもたちが、ロバ車の両脇と後ろから押している。
揺られ揺られて、目的地に着く。暗くて、辺りの情景がまったく分からない。
月明かりが照らしているのは、盛り上がった低い土塁だ。付近には、点々としている。城のイメージが、まったくつかめない。無理も無い、この暗闇では。しかしこれが、城跡である。
それにしても、「星がこんなにあったとは!」と思うほど、見上ける天空には、宝石を散りばめたかのように輝いていた。
昼間とは違って、遺跡こそはっきりと見られなかったが、砂漠の星空をたっぷりと見ることができた。



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