キャラバンの砂漠の足



ギリシアの史家ヘロドトスの言葉にあるように、「シルクロードはオアシスの賜」との言葉通り、オアシスなくしてシルクロードはあり得ないだろう。
鉄道のない時代に、ラクダなどの背を利用して砂漠を旅する隊商。武器や食料を備えて、隊伍を組んだ商人団体である。彼らが、そんなキャラバンを単位として活躍した背景には、苛酷な自然ばかりが相手ではなかった。砂漠に出没する強盗や追剥から身を守るためにも、キャラバンを組織する必要があったのだ。
車や鉄道がない時代に、旅の足となるのは動物が頼りである。牛や象、それにチベットでは「高原の舟」といわれる、ヤクなどさまざまだ。シルクロードの移動手段に適しているのは、「砂漠の舟」といわれているラクダである。その他、ロバや馬が使われてきた。
馬は人類と深い繋がりを持ち、運搬や農耕のほかに、軍事とも深く係ってきた家畜である。また、騎馬民族の足ともなってきた。その戦闘能力を活用して、近年まで、国家興亡史に関与してきたのだ。馬はロバよりも運搬能力があり、スピードも速かったので、キャラバンでも活躍していた。
一方、ロバはどうだろうか。ラクダに次いで、キャラバンの重要な位置にいるのが、ロバである。高さ1〜1.5mで、体重が260k前後。馬よりも小型で、スピードは遅い。しかし100k余りの荷を運び、耐久力があり、粗食や悪条件に耐える力がある。
ロバの家畜化は馬よりも古く、ナイル地方では紀元前4千年に、すでに家畜化されていたという。しかし乾燥地帯では、ラクダの方が耐久力の面では勝っているので、長距離輸送にラクダが活躍していた現状だった。
湿潤な中国、特に雲南や四川の交易や物資輸送には、ロバの依存度が高い。しかしロバは、気が進まないとテコでも動かない強情さがある。そのために地中海世界では、愚鈍な動物の代表とみなされ、「馬鹿」の代名詞になっているようだ。



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