キジルクム砂漠に向けて



朝食後、午前八時にホテルを発つ。キジクム砂漠の中の道路を走り、ブハラに向予定だ。バスで八時間は、たっぷりとかかるだろう。
 しばらく走ると町を離れ、辺りは田園地帯になる。沿道の果樹園は、花盛りだ。白い花はリンゴで、ピンク色がスモモの花である。これから稲を植えるというが、荒地のようになった田んぼが多い。途切れ途切れに、青々とした麦畑が続いている。
 道路の両側にポブラが植えてあるが、どれも、釣竿のようにしなった苗木だ。いくら成長が早いからといっても、並木になるのはまだまだ先のことだろう。畑の間には集落があり、どの家も日干しレンガ造りで、ほとんどが四角い平屋建である。
 車窓からの風景は、除々に変化をしていく。民家も少なくなり、田畑に変わって荒地が目立ってきた。
 一時間余り走ったところで、バスはガゾリン・スタンドに停まった。これから砂漠に向けて、ガソリンを満タンにしなければならない。
 スタンドの壁を背にして、小さな台を前に、屈んで物を売っている子どもがいる。青い花柄のスカーフを被り、赤いセーターの上から緑色のチョッキを着た、小学生ほどの女の子だ。
50cm四方の台の上には、ヒマワリの種や茹で卵、マッチなどが並んでいる。端の方には、丸い小さなタッパーがある。中には、自身が食べたいだろうと思われる、飴やキャンデーなどが入っていた。無表情で、じっと客待ちをしている少女の姿は、寂し気だ。
 ガソリン・スタンドを出ると、しだいに砂漠の気配が漂ってきた。アムダリヤ川の支流になるのだろう、川に沿って道路が続いている。進むほどに路面の亀裂や小穴が多くなり、バスはバウンドの連続だ。



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