砂漠の中の大河・アムダリヤ川



道路の両側からは、丈の高い木々がすっかり消え去った。こんもりと茂ったタマリスクが、茶色の荒地に点々と生えている。それが、なだらかな起伏の砂漠全体の風景となっている。
 今まで見てきたような、「不毛の砂漠」との言葉は、ここでは当てはまらない。それはまるで、草原のような光景である。これが、キジルクム砂漠なのだ。
 前方が開けてくると、大河が現われた。アムダリヤ川で、実に広大な川幅だ。支流から入った水流が寄り添って、青色と薄茶色の二本の線を描きながら、溶け合うことなく流れている。川沿いを、何百という羊の群が、草を食みながら移動をしていた。地平線との境を、やや青黒く縁取っているのは、トルクメニスタンの大地だ。まったくもって、雄大な風景である。
 アムダリヤ川は、シルダリヤ川とともに、中央アジアを流れる二大河川だ。いずれも、全長2000Kを超える大河である。シルダリヤ川の源は天山山脈で、フェルガナ盆地を通って、タシケント北方からカザフスタンを流れて、アラル海に達している。
 一方、今眺めているアムダリヤ川の源はヒンドゥークシュ山脈で、タジキスタンとアフガニスタン国境を流れて、トルクメニスタンに入っている。さらに、ウズベキスタンとの国境を縫うようにして流れて、アラル海に注ぐ。 現在その二大河川は、ほとんどの水量が運河に流れてしまっている。そのために、アラル海は年々縮小しており、消滅という深刻な危機に瀕している。
 サマルカンドやブハラなどのオアシス都市を育んできたのが、ザラフシャン川だ。かつては、アムダリヤ川の支流だった。しかし今では、パミールを源として約600K流れた後、ブハラを過ぎた辺りで、砂漠の中に消えている。



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