ティムールの故郷に入る



バスは、シャフリサーブスの町へ入った。時計は、1時半になるところだ。昼食は、この地の民家でのウズベク料理なので、楽しみにしている。
バスは、集落の路地へと入って行く。家々はどこも庭木に囲まれていて、落ち着いた佇まいだ。そんなとき、ふと、心の中のもう一人のわたしが呟いた。
「ティムールは、このような所で生まれ育ったのかなア……」
わたしは、彼と町のことを思い巡らせていた。
1336年に、この地で生まれたティムール。ここを地盤にして、頭角を現していった。彼は、世界の支配者になってからもこの地を忘れずに、サマルカンドに負けないほどの壮大な建築群を造り上げたのだ。
しかし残念なことに、十六世紀後半にブハラのアブドゥール・ハーンによって、町はほとんど破壊されてしまった。今のシャフリサーブスには、昔日の華やぎはない。しかし、深い歴史を秘めた静寂な佇まいが、今ここに残っている。
小さな中庭があり、花々が華やかに咲いている民家に入る。落ち着いた構えの平屋造りの家だ。きっと、この辺の上流階級の家なのだろう。清潔で上品な造りの室内に案内される。
部屋の中央には大きなテーブルがあり、我々14名は席に着いた。
次々と、料理が運ばれてくる。ウエーター役は、この家の2人の少年だ。大皿に盛られたサラダは、新鮮でパリパリとした歯応えがある。もぎたてと思われる、青臭さの残る完熟トマトは、色、味ともに申し分なく旨い。
ビールが飲みたかったが、2本しか置いていないという。イスラムの家庭では、止むを得ない。ましてや、昼時なので。
ビール希望者が、ちょうど2人だったので、わたしはロシア・ビール、Sさんはウズベキ・ビールを貰う。冷えていなかったが、貴重な1本をゆっくりと味わった。
やはり、羊肉と野菜をベースにした、ウズベク料理だ。さっぱりとした味の羊肉プロフが、美味だった。それに、ナンはここでも旨い。



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