市民が憩うハージュー橋



バスの車窓から眺める前方に、木々のまったく生えていない小高い岩山が見える。
頂部には、崩れかかった日干しレンガの城砦のような建物跡が見られる。山の岩肌と同化しているので、判別できないほどだ。
「アーテシュガー」という、サーサーン朝時代に建てられたゾロアスター教(拝火教)の神殿だと、ガイドのムサさんは言った。よく見ると、数珠繋ぎになった人々が、岩山を登って行く。20分ほどで頂上に行け、そこからの眺めは素晴らしいそうだ。しかし厳しい陽射しのなか、木がまったくない丸坊主の岩山を登ることを考えるだけで、後退りしてしまう。



しばらく東に向かって走ると、イスファハーン市街の南を流れる、ザーヤンデ川の橋の袂に着いた。イラン高原最大の川だけあり、川幅はもとより、澄んだ豊かな水量である。
川に架かる、二階建ての立派な橋は「ハージュー橋」だ。それはまるで、イスラム寺院の回廊のような造りである。
「市民の憩いの場」と言われている、集いの場でもある。夜もライト・アップされて、一日中賑わいが耐えないという。



長さ132メートルの橋は、17世紀の中ごろにアッバース二世が建造したものだ。往時の夏の夜には、上層部にあるテラスで、王はしばしば宴を張ったという。
橋の下層部は、川の水量を調整する水門の役割を果しているそうだ。上下の層とも、どちらも歩いて通ることができ、橋として大きな役割を果している。
大人も子どもも、恋人同士も、ズボンを捲り上げて素足になり、流れの中に入っている。そんなはしゃいでいる姿は、幸せそのものだ。



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