華麗な王族専用モスク


街のレストランで昼色後、再びイマーム広場に戻ったのは、午後二時近かった。
広場を境にして、アーリー・ガープー宮殿に向かい合った西側にあるモスク。これが、王族専用モスクの「マスジェデ・シェイフ・ロトゥフォッラー」である。アッパース一世がレバノン人説教師を迎えるために、1601年から17年間かけて造ったといわれている。
このモスクは、サファヴィー朝建築の傑作とされ、青を基調とする寺院が多い中で、ベージュ色を用いているのが珍しい。



四方を見回し、天井を眺め、実に鮮やかで壮麗極まりない。1800万片の装飾タイルを使用したモザイク技法で知られているそうだ。唐草模様のタイルが、美しい。
タイルは、20センチ四方のものが使われているという。モザイクは、タイルを切り込んでから張り付けているので、難しいそうだ。青色も濃淡さまざまで、濃い方がペルシア・ブルーで、淡い色がトルコ・ブルーである。
「世界一美しいモスク」と、イラン人が昔から、自慢しているモスクだけのことはあると思った。
「天井に孔雀が見えます。位置がズレると見えません」
ガイドのムサさんの言葉に、華やかに装飾されたドームを見上げる。でも、孔雀は見当たらない。そこで、ドームの中央から、ムサさんのいる入口側に行った。



その瞬間、一羽の尾の長い孔雀が見えたのだ。歓声を上げるとともに、思わず息をのんだ。
ドームに差し込むひと筋の光が模様となり、まさに孔雀が羽を広げたように見えるのである。そんなファンタジーな情景を、首が痛くなるまで天井を見上げていた。
「華やかな花園に孔雀が遊び、豊かに流れる清流の地」との「天上の楽園」を、ここに再現したのだろう。これはアッパース一世の遊び心、だったのかも知れない。
王族だけが使用するモスクだったので、中庭もなく、アザーンを呼びかけるミナレットもない、こじんまりとした造りである。



このモスクは、地下道によって宮殿に結ばれている。それは、王の妻たちは宮殿の背後にあるハレムから、このモスクに来たという。他人に見られることなく、地下道を通って来ることが出来るようにしてあったのだ。アッパース一世の、細やかな配慮が窺われる。



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