チャーイハーネのハシゴ



イマーム広場の北側に、チャーイハーネはあった。エイヴァーンの形をした、門の際に狭い入口があり、階段を上がると店になっていた。
若者たちは狭い店のテーブルを囲んで、水タバコをくゆらせていた。我々は、空いているテラスに出た。
店が北側にあるので、西日を正面から浴びる形になる。しかし、実に見晴らしが良い。先ほどのアーリー・ガープー宮殿のバルコニーからのように、イマーム広場はもとより、彼方にはどっしりと構えた連山が眺められる。



四人が一列に座り、一杯の紅茶を飲みつつ、目を細めてしばし無言で遠望していた。
でも、日差しは強くてさすがに暑い。飲み終わるやいなや、写真を撮ってからそそくさと退散した。
再び四人で、バザールをひやかして歩く。
お茶屋で値段交渉をしていると、わたしたちの背後から覗き込んできた、大柄の中年の男。店員の若者とわたしたちの間に入り、取り合ってくれた。



英語の巧い世話好きな彼に、ちょっと不信の念を抱いた。しかし話をしていると、誠実そうな人柄が窺えた。
近くにチャーイハーネがあるかどうか、中年氏に訊いてみた。彼は頷きつつ、一緒に行くという。
中年氏の後について行くと、バザールのメイン通りから路地に入る。入り組んだ細い道の両側には、小さな店が軒を連ねている。彼はどんどん、奥へ入っていく。
辺りの建物は、日干しレンガを積み重ねて、さらに土で固めた粗末な店ばかりである。そんな一隅に、チャーイハーネがあった。観光ポイントから外れており、わたし達だけでは見つけ難い場所にある。
入口の狭い店は奥行があり、いわゆる鰻の寝床のようだ。店の外観とは裏腹に、店内は華やかな造りである。
壁といい、天井といい、スペースいっぱいに置物で飾られていた。ランプのスタンドやガラス器など、どれも古そうだ。眺め回しているわたしに向かって、中年氏は指差しながら言った。
「オール アンティーク」
 水タバコの吸い方をていねいに教えてくれた後、わたしは吸った。その後、ツアー仲間のM氏やAさんとNさんが吸う。



 店には、数グループの人たちがいた。英語は通じなかったが、お互いに手真似を駆使して交流をしていた。それぞれのグループと写真を取り合ったりして、楽しいひとときが過ごせた。
 わたしにとってこの店は、三度目のチャーイハーネだったが、女性客が多いのには驚いた。女性たちは、ここに観光に来たイラン人だと中年氏は言う。彼女たちは、スパスパと水タバコを吸っていた。
イラン女性のそんな吸う姿を見ていて、恐る恐るパイプを口にしていた若いAさんやNさん。彼女たちは安心して、水タバコを初体験したのだろう。



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