ギョレメ屋外博物館の奇岩と洞窟



屋外博物館とは、言い得て妙である。
入り口に立って眺めるが、辺りの奇妙な形をした岩山全体が、博物館といわれても頷ける状態になっているのだ。
ごつごつとした奇岩群と、なだらかな岩肌などの入り交じった景観。キノコのようにニョッキリと突き上げる岩は、自然が造り上げたとはとても思えない情景である。



アナトリア高原中央部に広がる、大奇岩地帯のカッパドキア。ここの火山灰と溶岩が積み重なった地層は、数億年前に、エルジェス山の噴火によって造られたものだ。長い年月、風雨に打たれて侵食が進み、固い部分だけが残り、現在のような姿になったのだ。
雪の残った小道を歩いて行くと、前方から賑やかな声が聞こえてきた。
道を曲がると奇岩の入口があり、その前では高校生の男女の一団がいた。彼らにとって日本人が珍しいようで、わたしたちの姿を見ると、それぞれにカメラを向けてきた。わたしもカメラを構えると、みんな屈託のない笑顔で応えてきた。



そんなはしゃいだ姿は微笑ましく、カッパドキアの冷え切った雪風と静寂を破り、和やかな空気が漂っていた。
岩窟に入る。外の荒れた岩肌に比べて、内部は華やいでいる。壁面や天井には、無数の壁画が描かれている。これらのフレスコ画は、12世紀から13世紀にかけて描かれたものという。
このギョレミ谷には、30以上の岩窟教会があり、どの窟にも壁画が残っている。
壁画の人物がサンダルを履いているので、『サンダル教会』とも呼ばれている「チャルクル・キリセ」。聖ジョージらによる蛇退治の壁画のある、「ユランル・キリセ」。



キリスト教の生涯を描いた壁画がある、「エルマル・キリセ」。ここには以前、入口にリンゴの木があったことからその名が付いたという。「エルマ」とは、リンゴの意である。
窟内にはキリストを始め、さまざまな人物や動物、それに幾何学模様が描かれている。手の届く位置のフレスコ画は、色が薄れていたり、落書きされていたり、また傷を付けられている箇所もあり、残念だ。



窟内に光が入らないので、『暗闇の教会』と呼ばれている「カランルク・キリセ」。光に当たらないこの壁画の保存状態は良かった。
ライトに照らされた、鮮やかな色合いのキリスト像や、受胎告知、ベツレヘムへの旅、洗礼、最後の晩餐などのフレスコ画が見事である。




ホーム

inserted by FC2 system inserted by FC2 system