エーゲ海沿岸の古都エフェスへ



バムッカレから真西に向いて、バスはエフェスへと向かう。エーゲ海最大級のギリシア遺跡のエフェスまでは約220キロ。時間にして3時間以上はかかるだろう。現在、午前8時を回ったところなので、昼までには着くと思う。
このバムッカレの遺跡のある、この辺一帯は大理石の産地だという。そういえば沿道近くで、白い大石を切り出している石切り場を見ることができた。
大理石のほか、綿もこの辺は大生産地で、世界に輸出しているそうだ。しかし今の冬の時期は、綿畑は見渡らない。
沿道には、ブドウ畑が続いている。まだ芽吹き前の裸木だ。ザクロの木も見られる。夏になると、トウモロコシ畑も多いそうだ。オレンジやレモン、それにアンズ畑など、豊かな果樹園がどこまでも広がっていた。
行き交う車を見ていると、日本車があまり見られない。ガイドのTさんの話では、トルコではフランス車が多いと聞いた。それに、イタリアのフィアットだ。どちらも、トルコで造られた車種だという。安価で、丈夫で長持ちするからだそうだ。



トルコでも日本のように、ベンツとBMWは高級車である。ちなみに日本車では、ホンダのシビックが人気車種で、日産やマツダのスポーツ・モデルが受けているようだ。それに、恰好よりもエンジンが良いスバルだという。ミツビシやスズキは、トルコでは人気がないそうだ。
バスは、ミツビシが売れているという。安価で、長持ちするからだそうだ。ちなみに今乗っているバスは、ベンツである。
トルコ人の平均給料が、円に換算すると約5万円というから、車を持つ人は高所得者のようだ。一般サラリーマン・レベルに普及すれば、交通戦争に拍車がかかるだろう。イスタンブールの中心街での交通渋滞を、わたしは思い浮かべていた。



マイクを手にして、車の話をしていたTさん。彼はこちらを振り向きながら、眉間に皺を寄せつつ、出し抜けに言った。
「イスラム社会のトルコでも、近ごろは離婚が多いです」
まだ田舎では少ないようだが、都会では多くなったという。また最近までは、4人の妻を持っていた人もいたが、最近では一夫一妻だという。
結婚の平均年齢は、男性が30歳過ぎで、都会の女性は30歳ごろだそうだ。やはり田舎の女性は早くて、20歳から21歳で結婚しているという。
そんな、Tさんの話に耳を傾けつつ、車窓を眺めている。沿道に広がる、黄色い絨毯を敷き詰めたような菜の花畑が鮮やかだ。薄いピンク色で、桃のような花のアーモンド畑が、華やかに広がっていた。
中央分離帯は、ピラカンサの青い葉が茂っている。道路沿いの一隅には、オレンジ色の実を付けたミカンが、枝先を飾っている。こんもりと茂ったオリーブ畑も多く、その沿道には、巨大なユーカリの樹が規則正しく並んでいた。
桃畑の中に民家が増えてきて、しだいに集落となってきたころ、エフェスに入っていった。




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