エーゲ海に沿ってベルガマへ北上



イズミルの「Pホテル」を発ったのは、午前7時だった。朝の渋滞に巻き込まれたが、やっと街から出ると、バスは心地好いスピードでエンジンを高鳴らせて行った。
このイズミルは、エーゲ海観光の拠点である。また、エーゲ海地方最大の工業貿易都市であり、トルコ第3の都市だ。
かつてはイオニア人の植民地で、スミルナと呼ばれていた。ローマ時代になると、キリスト教が広まっていった。それによって、エーゲ海の中心都市として繁栄したのだった。
しかし、度重なる地震や外敵の侵入によって、多くが破壊されてしまう。第1次世界大戦では、ギリシアとの戦争の激戦地となり、大きなダメージを受けてしまった。しかし戦後の目覚しい復興により、トルコの中でも、最も活気のある都市の一つになったのだった。
イズミルから、ペルガモン王国の遺跡のあるベルガマまでは、約98キロだ。青いエーゲ海を見るのが、楽しみだった。でも残念ながら時々雨がぱらついてくる。沿道の花壇にはエニシダが咲き誇っており、鮮やかな黄色い花が雨に打たれていた。街路樹のユウカリの大樹は、青々と茂っている。
海岸線に出るが、相変らず小雨が降っている。左手に見やる海は、どんよりとした鉛色だ。
きっと、防風林になっているのだろう、辺りは松林が多い。海と反対側の道路沿いには、オリーブ畑が広がっている。どれも巨木であり、海岸線の気候に合っているのだろう。



海が途絶えると、のどかな田園地帯に変わった。菜の花が、黄色い絨毯を敷き詰めたように、沿道脇を飾っている。遠方には、ブドウ畑とオリーブ畑とが、交互に続いていた。
点々と植えてあるのが、アーモンドの木だ。ちょうど花盛りで、白に近いピンク色の花が、鮮やかに映えている。
道路に沿って、しだいに民家が増えてきた。ベルガマの町に、入ってきたようだ
かつてペルガモンと呼ばれていたこの都市は、アレキサンダー大王の亡き後に始まった都市だ。大王の所領していた、広大な領土は分割された。その遺産を手にした、リシマコフによって新王朝が開かれたのだ。しかし彼は、シリアとの戦いで戦死してしまった。そこで、その部下だったフィレタイロスが、その財宝を継いでペルガモン王国を築いたのだった。




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