小雨のエーゲ海を眺めつつトロイへ




ベルガマからトロイまでは、約220キロ。エーゲ海に沿って、バスは快走する。
空も海も鉛色で、相変わらず小雨がぱらついている。青いエーゲ海は望み薄で、むしろ、雨脚が激しくならないことを願っている。
沿道の民家の庭先にはミモザが咲いており、鮮やかな黄色が映えている。



しだいに、田園風景が広がってきた。辺り一帯はオリーブ畑で、延々と続いている。どの木も、かなりの巨木である。
オリーブの木の周りは、緑の絨毯を敷き詰めたかのように、青々としている。三々五々と羊たちが、その草を食んでいた。



海岸線に近い付近は、松林が多い。きっと、輝く太陽が照り付けているときは、青い大海原とマッチした、海浜の眺めなのだろう。そんな、どんよりとした車窓の風景を見詰めつつ、昨夜飲んだラクを思い出していた。
「ラク」とはトルコの焼酎で、庶民に親しまれた酒である。昨日の夕食どきは、いつものトルコ・ビールの「エフェス」を飲んだ。部屋に戻ってから、ミニ・バーの缶ビールを飲みながら、土産として買ったミニ・サイズのラクを眺めていた。しかし呑ん兵衛にとって、見るだけではなくて飲みたくなった。
アルコール度は45度と強いので、水割りだ。ミネラル・ウォーターの入ったグラスに、無色透明のラクを注ぐ。ガイドのTさんが言っていた通り、見る間に、牛乳のように白く濁ってきた。
恐る恐るグラスを近づけて、香りのする白い液体を口の中に含む。初めて飲むラクは、何と言い表わしてよいのか分からない、独特の味だ。しかし、思っていたよりも甘味があり、飲み易い。
チビリチビリと独酌しているが、ミニ・サイズ瓶は、またたく間に底を突いてしまった。これは呑ん兵衛には、クセになりそうな味である。



そんな「ラク」のことを思い浮かべていると、トロイの遺跡の前にバスが停まった。時計の針は、午後3時半を回ったところだ。雨脚が強くなってきたので、カメラをジャンパーの中に入れて、傘を差した。




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