灰色の鷹のアーチ橋


右手に市役所の建物を見やりつつ、バスはアタテュルク大通りを、金角湾方面へと走る。
正面には、大通りをまたぐようにして水道橋が建っていた。石造りで、高さ20メートルある巨大な橋だ。造られたのは4世紀で、ローマ帝国ヴァレンス帝時代である。往時、全長1キロあったそうだが、現在は800メートルほどの部分になっている。
この橋は、ファーティフの丘とエミノニュの丘に間に架けられ、北西郊外の森にある水源から引いていた。水は、アヤソフィア近くの地下宮殿へと導かれていたのだ。それはオスマン・トルコ時代までイスタンブールに水を供給していたのだった。
橋のアーチの下には、人も車も通り、交通量が非常に多い場所だ。そこに、どっかりと腰を据えたかのように、大通りをまたいている。
そんな、新と旧とがミックスした歴史を感じさせる情景は、かつて訪れたローマの街に似ていた。
ガイド・ブックでは、この水道橋を「ヴァレンス水道橋」と書かれているが、現地トルコでは「灰色の鷹(チョウゲンボウ)」のアーチ橋」の通称で呼ばれているようだ。
旧時、イスタンブールの旧市街には、地下貯水池が数ヵ所あったという。
4世紀から6世紀に、コンスタンティヌス帝からユスティニアヌス帝時代に、造られたといわれている地下宮殿。それらは、ビザンツからオスマン朝時代にかけて、主要な水瓶となっていたのだ。
ヴァレンス水道橋からの水は、この地下の貯水池に導かれていったのだった。ここに貯えられた水は、トプカプ宮殿のスルタンたちの喉を潤していたのだ。
池は、縦140メートルで横70メートル。高さは8メートルあり、内部はコリント様式の柱で支えられているという。




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