さらばイラン!


見慣れない素晴らしい宝石の煌きを、長い時間見続けていたので、館を出てからも目が落ち着かない。輝いた余韻を、まだ瞼に残しているのだ。
時計を見ると、午後3時半を指していた。この宝石博物館を最後に、イランでの7日間の旅に終止符を打つことになる。これから空港へ向かい、午後6時55分にフライトする予定である。
機は、テヘランから約8時間余りで、インチョン空港に着く。さらにトランジットしてから、2時間半ほどで成田に着く計算になる。明日の昼ごろには、到着するだろう。
かねてより行きたいと思っていた、イランの偉大な遺跡の旅は、充実した楽しい旅だった。でも実は、この旅を決めるにあたって、にわたしは大分迷ったのだ。それは、禁酒国・イランだったからだ。
一日たりとも晩酌を欠かしたことのないわたしは、一週間の禁酒には自信がなかったのだ。しかし、素晴らしいイランの遺跡が、わたしの心を動かしたのだった。



旅の始めのころは、アルコールに対して異常に意識していたが、しだいに消え去っていった。今では禁酒は平気になり、「酒を止めようか!」と、本気で思うようになっていた。
それに、呑み過ぎるということがなかったために、旅の間は胃の調子が良かった。初めて口にするイラン料理を、何でも美味しく食べられたのだ。過去30数回の海外旅行の中でも、最高のコンディションで旅を楽しむことができた。



笑顔を絶やさない、穏やかなイラン人。あどけない、子どもたちの瞳。深奥な歴史を物語る、偉大な遺跡……。
次々と脳裏を過ぎる旅情を、心の奥深く焼き付けた。
バスは、革命広場のロータリーを回ったところだ。この先に見えるのは、ペルシア建国2500年を記念して建てられた、「アーザーディー・タワー」である。
空港は、もう近い!




ホーム

inserted by FC2 system inserted by FC2 system