命の動脈・カレーズ



バスの車窓から眺める砂漠の中に、土の塚が点々と並んでいる。これはカレーズで、ペルシア語で「地下水」を意味する。塚の下には、地下水路が延々と続いている。
中央アジアに特有な灌漑施設の一つで、天山山脈の雪解け水を、低地トルファンまで送っているのだ。それは、砂漠の中に傾斜のついた横穴を掘って、水を引く方法である。このカレーズは、2000年前から造られてきている。
トルファンには約1500本のカレーズが掘られていて、総てを繋げると、約5000kに及ぶといわれている。井戸の最も深いところで67mあり、井戸間の長さはふつう3kだが、長い部分では10kあるという。
カレーズの構造は簡単で、砂漠の猛暑から、蒸発を防ぐことができるのが最大の利点だ。天山山脈からの水量が安定しているので、理想的な水路である。
トルファンの人口約24万人の人々は、このカレーズからの水の恩恵を受けて、日々の生活を送ることができる。それは、葡萄やハミウリ綿花などの耕地に、水を引くことができるのだ。
まさに人間の血管と同じで、カレーズが詰まったら、村は死んでしまう。まさに、命の動脈でもある。
カレーズは、集落に入ると地上を流れている。水路の両側にはハコヤナギが植えられ、雪解けの水の冷気を保っているのだ。
そんな、砂漠の中の緑に覆われたオアシスを思い浮かべつつ、カレーズという困難な事業を成し遂げた、古人の素晴らしさを感じ取っていた。
砂漠の移動の途中、カレーズの井戸に入ってみた。小高く盛り上がった、塚の側には石段が取り付けられており、数メートル下の流れの側まで下りる。砂漠の熱気が遮られ、しばらくすると、汗ばんでいた体もすっきりしてきた。備え付けられたコップで、流れる水を飲む。冷蔵庫で冷やしたとまではいかないが、思っていたよりも冷たかった。
「カレーズとは素晴しい!」と頷きつつ、ニンマリとした。





                                  
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