車師国の都・交河故城



二つの河が交わる場所にある交河故城は、トルファン市街地から西方16kの高台にある。六世紀初頭に築かれた車師前国の都であり、現存する城址遺跡は、唐代以降に建築されたものだ。
この城は、高さ30mほどの断崖上に造られた、都市遺跡である。長さ1760mの船形に細長く延びており、その幅は、もっとも広いところでも300mほどしかない。崖上にあるために城壁はないが、南端と東西側の三方には城門がある。
城内は、寺院区と居住区、官署区に分かれている。寺院遺跡は西北部に集中しており、50ヵ所余りの仏教建築遺跡が確認されている。ここからは、漢文文書のほか、梵文や古チベット文が記された、泥の仏塔が出土している。
わたしは、前回ここを訪れたときのことを思い出していた。寺院区の中央に、崩れかかった仏陀座像があったことを覚えている。南北に貫いている大通りを、足早に寺院区へと向かう。
記憶通りの姿で、龕の中に納まっていた。かつては、日干しレンガの刳り貫かれた壁の四ヵ所に、座像があったようだ。しかし今は、下の二面には支えの穴が残っているのみで、像は無い。上部二面の野晒しの仏座像は、首無しである。きっとイスラム教徒によって、破壊されたのだろう。像の胸部や定印を組む腕、それに、趺坐する足組みは力強い。
居住区は、中心に延びる大通りによって、東西に分かれている。ここには住宅とともに、多くの手工業者の工房があったそうだ。
城内で、規模の大きな建築跡が、官署区である。周囲の壁は、版築という築造法で造られている。板で枠を作った中に、土を杵で突き固めるといった方法だ。内部の構造も、地下広場などを含む、複雑な仕組みになっている。





                                  
inserted by FC2 system