砂漠の舟・ラクダ



砂漠のキャラパンには、馬やロパを用いることもあるが、最も一般的なのがラクダである。「砂漠の舟」といわれているだけに、砂嵐にも耐え、砂漠に適応しているのだ。
ラクダは体長2.3〜3.5mで、体重は450〜690kある。その背には、120〜180kの荷を積み、時速5kで進む。実働8時間として、一日約30k進むことかできる。
ヒトコブラクダは、北アフリガのサハラ砂漠からアラビア半島、さらには、北はカスピ海南岸から、南は西北インド゙に分布する。フタコブラクダは、ゴビ砂漠からモンゴリア、南ロシア、イラン、アフガニスタンで飼育されている。
野生のラクダは、ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠東部に生息している。数頭から10数頭で移動し、一般に1頭の雄と、数頭の雌と子の群である。夏は山地に移動し、冬は砂漠に戻ってくる。ラクダはほとんどの植物を食べ、塩水も飲むという。野生種は現在、500頭ほど生息しているそうだ。
ラクダは従順で、おとなしい動物だ。しかし発情期の12月、寒さか厳しいときほど、雄ラクダは凶暴になるといわれている。
アラブにおいては、ラクダが家畜の主体となっている。人間生活と深い係りを持つラクダの家畜化は、紀元前三千年ごろには、アラビア半島で飼い馴らされていたとみられる。
古代においては、ラクダを乗用に用いたのは、バビロニア帝国の人々だといわれている。やがて、ヒッタイトが馬を乗用するようになったが、アラビアではラクダの使用が盛んだった。
古代ペルシア帝国では、ダレイオス大王やクセルクセス一世は、ラクダを駆使するアラビア兵を大いに利用したという。戦闘用に、使われたのだった。このアラブが飼育したヒトコブラクダは、体温が40度に上るまで汗をかかないそうだ。
血液から必要な水分を取り入れる人間とは違い、体組織から供給される。ラクダは、体重の40パ一セントの水分を失っても、生活できるのだ。その直後には、10分間で92リットル余りの水を飲むことかできるという。
こんな特異なヒトコブラクダを駆使して、アラブは中近東の大征服やイスラム化の歴史を展間した。それらの大発展は、ラクダの存在なくしてはありえなかったことである。
二種類のラクダを比較してみると、アラブのヒトコブラクダは暑さと乾燥に強い。一方フタコブラクダは、寒さと荒地に強い。どちらのラクダも、忍耐強くて従順である。



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