温泉保養地・パムッカレ



バムッカレへ向けて、バスは発車した。時計はちょうど、午後2時半を指している。コンヤから430キロあり、5時間から6時間はかかるだろう。パムッカレへ着くのは、8時過ぎてしまうに違いない。
町を出ると、しだいに沿道の民家が少なくなっていく。畑の中には、家々が点在している。まだ芽吹かない辺りの木々は、サクランボウである。「この辺は有名な産地です」と、ガイドのTさんは車窓を指差しながら言った。
近くには湖があり、その豊かな水の恩恵を受けて、果樹栽培や野菜作りが盛んだそうだ。果物の種類も多く、ザクロ、アンズ、モモ、イチジク、オレンジ、リンゴの木も多いという。その他、スイカやメロンもよくできるようだ。何でもできるといっても、トロピカル・フルーツの代表のバナナは、地中海方面では無理である。



わたしの好きなピスタチオも、この辺で作られている。それに、カリン。日本ではカリン酒で知られているが、こちらでは生で食べられるという。
広がる農地は、小麦畑だ。この辺は、大生産地にもなっているという。米はトルコの南の地方が知られているが、この辺では作らないそうだ。
道路に沿って、両側にはポプラが植えられている。若葉が出るころは、きっと素晴らしい並木道の姿を見せてくれることだろう。



家の周りの防風林としても、この辺ではポプラが利用されている。それに、畑の境界線にも植えられており、利用価値の高い樹木である。
車窓から遠望する、どっしりと構えた連山は雪衣を纏っている。陽は西に落ち始め、辺りに夕闇が迫ってきた。白銀の峰々は、頂部がオレンジ色に染まり、中腹から麓にいくほどに、暗さを増している。
これから訪れるパムッカレは、トルコ語で「綿の城」との意だ。綿のように白くなった石灰棚が珍しく、世界遺産になっている。またトルコ有数の温泉保養地としても知られている。



石灰棚の所々には、温泉水が溜まった池があり、かつては湯に浸かることができたそうだ。しかし、現在禁止されたのは、開発ラッシュのために温泉が涸れつつあるからだという。
景観保護の観点からも、現在石灰棚には入れなく、展望台や遊歩道から眺めるだけとなっている。しかし、石灰棚の白と池のブルーとのコントラストが美しく、その景観を見るだけでも価値がある。
薄暗い道路を、バスはエンジンを高鳴らせつつ、パレッカムの町に入った。ホテルに着いたのは、午後8時を回ったところだった。




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