イスタンブールのバザール


トルコに来てから7日になり、今夜の便で帰国する日となった。残り少ないトルコの旅を、たっぷりと楽しもう。
人通りの少ない、「グランドバザール」。それもそのはずで、まだ午前9時にはなっていない。店の準備をしているところも多く、その側を通勤者らしき通行人が、足早に通り抜けていく。開店した店先では、店員たちは腕組みしながら、手持無沙汰に客待ちをしていた。歩いているわたしに、店員たちが競うかのように、日本語で話しかけてきた。わたしは首を振って、バザールの奥へと進んで行く。
イスタンブール大学近くにあるこのグランドバザールは、トルコ語で「カパル・チャルシュ(屋根付き市場)」という、屋内市場だ。東西からの物資が集まり、中東最大といわれるほど大規模なバザールである。4千〜5千軒の店が、集まっているといわれている。
バザールの歴史は古く、15世紀半ばにメフメット二世によって造られたそうだ。シルクロードの隆盛とともに、栄えてきたに違いない。


迷路のような道に入り込んでしまうと、出られなくなってしまう。メインの道を覚えておいてから、左右の細い道を歩く。現地の人には声をかけないが、日本人と見ると客引きが、前からも横からも、肩越しからも来る。首を横に振ると、すぐに離れていくのでわずらわしくなくて好い。
金銀細工、カーペット、陶器、バッグ、革製品……など、「ここで買えない物はない」と言われているほど商品は豊富だ。大半が土産物で、地元民はここで買い物はしない、とも聞いた。
それゆえ、観光客には2〜3倍もの値段を吹っ掛けてくる。「言い値を払うのはバカ者」と言われているのだ。ぼったくられるのは当り前なので、それを値切るのが、旅慣れた人の腕の見せ所である。
何も買わないで、大アーケードに戻った。すると背後から、すっと現れた中年男。左手に山のような皮の帽子を抱え、右手にハンチングをかざしてきた。羊皮で柔らかくて、形も良い。わたしはキャップが気に入り、2千円のところ半額の千円で買う。彼は顔をしかめていたが、それでも儲かっているだろう。
グランドバザールから北に向かって、ガラタ橋方面にあるのが、「エジプシャンバザール」である。イェニジャミィ横が広場になっていて、ここには無数の鳩が集まっていた。餌を与えている老女の近くには、いちだんと鳩が群れていた。


広場の正面が、エジプシャンバザールだ。立派なアーチの石壁には、バザール名を書いた、これまた見事な看板が取り付けられていた。
グランドバザールと比べて、小規模なエジプシャンバザール。ここはいわゆる、おじさんおばさんに愛されている、庶民的市場だ。
たくさんの香辛料が売られているので、「スパイス・バザール」とも呼ばれているそうだ。その名の通り、スパイスのスペースが主体になっていた。わたしはトルコ各地で飲んで旨かった、アップル・ティーを土産に買った。むろん纏めて買い、だいぶ値切った。
このバザールは昔、エジプトからの貢物を集めて売っていたので、その名が付いたといわれている。





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